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のりしろと脚注のはざま

のりしろとのびしろは似てるけどだいぶ違う

「潜水服は蝶の夢を見る」

潜水服は蝶の夢を見る 特別版【初回限定生産】 [DVD]
映画館で予告見た時からもちろん気になっていたんですけど、つい見そびれ(って、コレばっかりですね私)、ようやくDVD出て今日見ることが出来ました。
ていうか、まーあの、ブログには過去何度か書きましたが、私の父親、10年くらい前にALSって難病で亡くなっておりまして、その闘病時の姿が、予告編で見た主人公の症状に非常に似ていたもので、公開当時映画館で見る気持ちになれなかったんですけどね。

で、DVDを見て、・・・・大丈夫、客観的に見ることが出来ました。その上で、この映画は本当に良く出来てると思いました。

こういうテーマを扱っても、フランス映画はフランス映画なんだなーと感心してしまいましたよ。映画の主人公となる原作者の著作もきっと、おフランス的で(「おそ松くん」イヤミへのオマージュです)洒脱な、いい語り口なのでしょう。

「ロックト・イン シンドローム」に陥った男の視界や、声なき言葉や、苛立ちや、悲しみや、希望や、・・・・そうした様々なものを、こんなに美しく、しかもリアルに描く映像のすごさ。構成のすごさ。俳優の演技のすごさ。
これがもしハリウッド映画なら、感動巨編に作り込むかもしれないけど、たぶん全く違う味わいのものになったんだろうな。

とか思ったけど、実は監督のジュリアン・シュナーベルは名前から推してフランス系だろうけどニューヨーク在住のアメリカ人だし、当初の脚本はアメリカ人の手によって英語で書かれていたというし、制作総指揮はかのキャスリーン・ケネディ、・・・・ってコレ、基本アメリカ資本の映画なんでした。
ただもうシュナーベル監督が「これはフランスの男が書いた物語だからフランスで撮らなければならない」という頑とした思いだけで、フランスを舞台にしたフランス語で語られる映画になったけれど、もしかしたらアメリカの話に置き換えて撮られた可能性もあったようなんです。

主演候補は当初シュナーベル監督と親しいジョニー・デップが演じる予定で、監督はデップにフランス語で演じてもらうつもりだったようですが、ちょうどその頃デップは「パイレーツ・オブ・カリビアン」の撮影で忙しく、急きょ「ミュンヘン」に出ていたフランス俳優、マチュー・アマルリックに白羽の矢が立ったらしいです。
ジョニー・デップが演じるジャン=ドーもちょっと見てみたかった気もしますが、いやしかし、マチュー・アマルリックでよかった。この役は彼でなければならなかった、と思えます。

ま、これを見て父のことを当然思い出したし、この主人公同様、頭はハッキリしているのに身体が言うことを聞かない、意志がうまく伝えられない状況がどんなに歯がゆく悲しいことだったかと、改めて思い至って切なくはあったけれど、その中でも最期の数ヶ月、父とたくさん語らう時間は持てたし、笑顔もたくさん見たような。
ああした病気にかかることは不運だけれど、父は死に至る生き様で、様々なことを私たち家族に教えてくれたんだな、と思ったりもして。
これは非常にいい映画でした。